低下しつつある国内製造業の競争力を高めるため、デジタルを活用したものづくり革新が求められています。
この記事では、ものづくり革新の必要性を「企業変革力」と「レジリエンス」という観点から説明するとともに、生産管理システムの導入を中心とした、ものづくり革新の実現例を3つの視点からご紹介します。
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1 国際競争力の低下が懸念される製造業2 ものづくり革新が必要とされる理由3 ものづくり革新の実現例を3つの視点で解説3.1 人材育成3.2 プロセス管理・可視化3.3 品質管理4 モノづくり革新を実現するための第一歩はデジタル活用から国際競争力の低下が懸念される製造業近年、日本の製造業は国際競争力の低下に直面しています。国際競争力を「価格競争力」、「非価格競争力」と分解した場合、前者の「価格競争力」が国際競争力の低下の主な要因のひとつであると考えられます。
例えば、新興国であれば製品のコストを抑えて製造・生産することができます。別の視点で、デジタル化・DX化を推進している国・企業であれば、生産性・効率を高めることで、全体のコストを抑えたものづくりを実現することができます。
日本においては、人件費を含めコストを抑える手段には限界がある可能性が高いため、デジタル化・DX化を通じて生産性の向上を図ることが良いと考えられます。
また、国際競争力の低下が懸念される中、新型コロナウイルスの感染拡大が更なる影響を及ぼしています。
2020年から続くコロナ禍の影響を受け、国内製造業各社の業績(売上高、営業利益)は減少傾向にあり、今後数年は先行きが見通せない状況が続くとされています。新型コロナウイルス以外にも、米中貿易摩擦や自然災害等の外的要因(不確実性の高まり)により設備投資を控える企業が増えており、投資不足による競争力の低下も懸念されます。
出典:経済産業省「2021年版 ものづくり白書」
ものづくり革新が必要とされる理由低下しつつある国際競争力を再び強化するため、日本の製造業には「ものづくり革新」が求められています。ものづくり革新とは、不確実性の高まる現代において、環境変化に適応できる柔軟かつ強靭な組織を構築することを指します。
環境変化にすばやく対応するためには、「企業変革力(ダイナミック・ケイパビリティ)」を高めることが不可欠です。企業変革力は、以下の3つの要素から構成される能力のことです。
1.感知(Sensing)企業変革力(ダイナミック・ケイパビリティ)の起点となる能力です。問題を発見する、情報を収集する、情報から本質を理解するという3つのスキルに分解でき、事業や業界が直面する脅威・危機などから企業の競争状況を把握することができます。
2.補足(Seizing)感知した機会を活用し、経営資源を再構成して競争力を獲得する能力です。本質からビジネス機会を発見してコンセプト化し、そのコンセプトの実現に向けた構想の立案をしていきます。
3.変容(Transforming)企業の競争力の優位性を維持するために、組織全体を変容していく能力です。組織全体を変容していくためにはステークホルダーとのコミュニケーション、コラボレーション(チームワーク)とコンセプトの実現まで継続的に学習することが重要です。
また、さまざまな危機に対して被害を最小限に抑え、かつ迅速に回復するための「レジリエンス(※)」を強化することも重要です。たとえば、サプライチェーンを俯瞰したうえで、不測の事態に備えて調達先を分散・再構築するといった取り組みが求められます。※突然の状況・社会的な変化、リスクなどに柔軟に対応する能力であり、組織を存続させ繫栄させるためには重要である。
企業変革力やレジリエンスの強化のためには、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する必要があります。DXによって製造工程やサプライチェーンを「見える化」することで、効率性や柔軟性の向上が期待できるからです。データの収集やAIを使った予測、3D設計による製品開発の高速化など、デジタルの用途は多岐にわたります。
さらに、第4次産業革命とも呼ばれる「society5.0」に注目する必要もあるでしょう。これは、生産プロセスの自動化やデジタル化の進展によって生産性を大幅に向上させ、これまでにない付加価値を生み出していく運動を指します。この中心にあるのが「スマートファクトリー(考える工場)」です。
工場内の設備をインターネットに接続することで、各製品の製造時期や納品場所などの情報を共有し、製造プロセスの円滑化や既存のバリューチェーンの変革等を促します。スマートファクトリーが普及すれば、大量生産の仕組みを活用しつつオーダーメードで製品を作る「マス・カスタマイゼーション」を実現することもできます。
不確実性の高まりと同時に、技術革新のスピードも速まるなか、「society5.0」に基づくスマートファクトリーの普及やDXの推進は喫緊の課題です。国際社会に取り残されないため、デジタルを前提としたものづくり革新が必要となってきます。
ものづくり革新の実現例を3つの視点で解説ものづくり革新を実現するためにはどうすれば良いのでしょうか。具体的な実現方法として、下記の3つが挙げられます。
人材育成1つ目は人材育成です。デジタル技術を活用することでものづくりに携わる人材を育成し、ものづくり革新の進展を図ります。具体例として、以下の4つをご紹介します。
1.動画マニュアル業務マニュアルはどうしても文字や数字ばかりになりがちですが、これではノウハウが正しく伝わらないおそれがあります。しかし、動画マニュアルを使えば初心者にも正確にノウハウを継承できます。熟練技術者に人の視線を可視化する眼鏡をかけてもらい、いつも通りの作業をするだけで正しい手順データを撮影できるため、マニュアル作成の負担もかかりません。
ものづくり人材の確保やマニュアルの改善に悩む企業の課題を解決してくれる、優れたデジタル技術です。
2.CADでの設計図の管理CAD図面をPDMで管理をすることで、類似画像検索やモジュール化への活用が可能となります。たとえば、図面のイメージ図から似た形状のモデルを類似度順に表示してくれるサービスを使えば、図面を検索する手間が省けます。
また、組合せ頻度の高い部品のモジュール化に取り組むことで、それらの組み合わせによって新たな製品を作り出せます。これにより、見積業務のプロセスを効率化できるほか、設計者を介さずに製造部品表の作成を行えるようになります。
3.VRゲーム等の分野では普及しつつあるVRですが、企業における社員研修への活用も期待されています。たとえば機械整備の練習や緊急時の対応など、VR体験によって実際のものに近いシミュレーションができるため、講義やビデオによる研修よりも効率的にスキルを習得できます。
4.ARでの遠隔支援ソリューションARは「拡張現実」とも呼ばれ、実際の空間の映像にCGを合成し、バーチャル空間を生み出す技術です。製造業の分野では、ARで実際のものに近い作業空間を作り出すことで、技術習得のための効果的なトレーニングを積めます。コロナで非接触・リモートの環境になっても、ディスプレイ上に作業手順を表示することで教えられるのもメリットです。また、遠隔地でも作業指示が可能となるため、1人の技術者が離れた場所にある複数の現場に指示を出せます。
このようにARを利用することで、コストを削減しつつ、効率的に人材を育成できるようになります。
プロセス管理・可視化2つ目はプロセス管理や可視化の推進です。価格競争の激しい製造業にとって、生産コストの全体的な見直しは必須となっています。そこで役に立つのが、デジタルを活用した以下の3つの方策です。
1.(リアルタイムな)生産管理システム「MES(製造実行システム)」と呼ばれる生産管理システムを導入すれば、リアルタイムで作業状況をチェックしたり在庫を把握したりできるため、生産効率を大幅に向上できます。また、製造に必要な情報やノウハウを蓄積できるため、生産計画作業を現場全体で共有でき、突発的な作業指示変更などの問題への対策指示を特定の人物に頼らなくて済むため属人化解消に期待できます。
2.動線分析現場における作業員の動線を分析することで、無駄を発見しコストダウンを図れます。動線分析システムを導入すれば、現場の滞留時間や通過頻度などを視覚化でき、作業工程を改善できます。ラインを止めずに分析できるのもメリットです。
3.生産ライン間の連携MESは生産ライン間の連携にも効果を発揮します。たとえば、販売管理や生産計画といったプロセスを既存システムで管理している場合でも、MESと連携し情報を集約することで、現場で必要な情報を全体で共有できるようになります。これにより、従来は情報の共有が難しかった上流工程と下流工程でも相互にコミュニケーションが取れるようになり、工程間の滞りの低減と生産状況の見える化を図ることができます。
品質管理3つ目は品質管理です。代表的な活用例は、AIを搭載したカメラによる不良品検知です。サンプルとして大量の不良品画像を読み込ませることで、不良品を自動で検知できるようになり、検査効率が飛躍的に向上します。目視検査が不要となるため、人件費や時間的コストを大幅に削減できるでしょう。AIを活用することで、人手不足の解消やヒューマンエラーの削減が期待できます。
モノづくり革新を実現するための第一歩はデジタル活用から国際競争力はもとより、社会情勢の変化や働く環境の多様化が進み今後の競争を生き抜くためには、今後を担う人材の育成や生産効率の向上といった製造現場の課題解決がより重要になっています。
当社では、デジタルを活用したモノづくり革新に必要な各種ソリューションをご提案可能です。製造現場の課題やお悩みを抱えているお客さまは、ぜひ一度ご相談ください。
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